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なぜ韓国のパンダに中国人が干渉するのか?

K-POPの人気ガールズグループ、BLACKPIN(ブラックピンク)が番組のロケでパンダに触れ合った際の行動に対し、扱いに問題があったとして一部の中国人ネットユーザーから非難を受けました。しかし、ブラックピンクのメンバーは韓国にあるテーマパーク「エバーランド」で、韓国生まれのパンダを抱っこしています。なぜ韓国のパンダの扱いに、中国人が口を出すのでしょうか。

ブラックピンク、パンダの扱い悪いと中国ネットで批判

2020年、ブラックピンクの公式YouTubeチャンネルのバラエティー番組で、予告編としてメンバーがパンダと触れ合う場面が公開されました。世界的に有名なアイドルがパンダと触れ合うほほえましい映像ですが、一部の中国人のネットユーザーから、「濃いメークをしたままマスクや手袋をせずにパンダに触っている。」「衛生管理がなっていない。」などの非難が寄せられました。また他のネットユーザーは、「幼いパンダは免疫力が弱い。ブラックピンクのメンバーが知らなかったとしても、番組制作者やパンダの管理者などがなぜ教えてあげなかったのか。」と指摘しています。これに対し番組制作側は、エバーランドのパンダ飼育員の指導の下で徹底した消毒の後、パンダと接触しており、安全性に問題はないと発表しています。しかし、後にこの動画は削除されることとなりました。中国ではパンダを取り扱う場合、専門家が適切な服を着て取り扱うべきだされています。そうしないとパンダの子供が最悪の場合、死んでしまう恐れがあるというのです。しかし、撮影はソウル近郊のテーマパーク「エバーランド」で行われています。エバーランドは韓国を代表する巨大企業であるサムスングループ系列のサムスン物産が運営するテーマパークです。そして、メンバーが触れ合った子供のパンダ「福宝(フーバオ)」は2020年7月に韓国で生まれています。普通、日本でジャーマンシェパードをどのように扱おうが、ドイツ人は権限を持ちませんよね。

韓国はパンダを中国から借りている

ではなぜ韓国人のパンダの扱いに対して、中国人がこれほど厳しく口を出すのでしょうか。それは韓国がパンダを中国に借りているからです。前述したように、福宝は韓国で生まれました。母親は当時、7歳だった愛宝(アイバオ)、父親は当時9歳の楽宝(ロバオ)です。2頭とも2016年に中国友好大使として四川省からやってきました。彼らは15年のローンで中国から借りているのです。そして、世界中のほとんどすべてのパンダは中国から借りています。絶滅の危機に瀕しているパンダは1984年からワシントン条約により国際的な商業取引や贈与が禁じられました。1980年代の野生のパンダの個体数は1114頭でした。このように、パンダの商業取引に関して厳しい制限がされていましたが、1994年からは保護や保全、飼育繁殖の技術を研究する学術目的のためパンダを借りることができるようになりました。2021年現在、30年におよぶ保護活動の結果、野生での個体数は1860頭にまで増えましたが、パンダの生息環境が厳しいことには変わりありません。パンダは非常に希少な動物なのです。2019年現在、世界中の動物園のパンダの個体数は600頭のみで、入手するのは非常に困難です。パンダがいる動物園は世界中で26か所だけおなっています。そのうちアメリカ合衆国ではアトランタ動物園、メンフィス動物園、スミソニアン国立動物園、そしてサンディエゴ動物園の4か所のみです。これらのパンダはアメリカ合衆国で育てられているにもかかわらず、すべて中国が所有しています。日本でパンダを飼育している動物園は東京の上野動物園、和歌山県のアドベンチャーワールド、そして兵庫県の神戸市立動物園の3か所です。韓国に至っては福宝がこの国で初めて生まれたパンダで、この親子3頭のみが韓国にいます。

パンダの飼育には〇億円かかる!?

それではパンダを借りるのにいくらかかるのでしょう。リース期間は10年から15年で、レンタル料は年間約1億円以上にもなります。レンタル料に加えて通常のパンダを飼育する上での費用も掛かりますね。まずは食費を見ていきましょう。みなさんもご存じの通りパンダは主にタケ・ササ類を食べます。パンダはクマ科ジャイアントパンダ属に分類され、もともとは食肉性の強い雑食動物でした。ですが、彼らは天敵や餌の競争を避けて山岳地帯の奥地に生息するようになります。そしてこの場所で冬に枯れることがなく、豊富にあったタケ類、ササ類を食べる道を選んだのです。そのため彼らの胃や腸は竹や笹を消化するのに向いてません。パンダは食べた竹や笹のうちの17%しか消化できていないのです。そのため大量に食べて栄養を摂取する必要があります。彼らは1日に10時間以上を食事に費やし、その間に竹や笹を20~30㎏も食べます。これは体重の約40%の量に当たり、人間が1日に食べる平均の量の10倍にもなります。これだけ食べるのだから排泄量も多く、1日に40回もフンをします。このように大量に餌を食べるため食費は1日に約1万円もかかり、年間約365万円になります。多額の食費に加え、パンダを飼育するには特別な場所を必要とします。彼らが健康的に動き回ることができる場所が必要です。デンマークのコペンハーゲン動物園のパンダ舎は27億円かけて建設されました。これらのことからパンダを所有したいと思ったら15年で総額約43億円かかるということになります。43億円あればブラックピンクのアルバムを100万枚買うことができます。

パンダは繁殖が難しい

そしてパンダは繁殖が難しい動物でもあります。メスのパンダは1年に1回しか排卵せず、そのため妊娠可能な期間は2、3日です。そのため、この機会を逃すと、次の機会まで1年間待つ必要があります。このように繁殖力が低いことが絶滅の危機に瀕している理由でもあります。さらにパンダの赤ちゃんは世界で一番何もできないのひとつです。パンダは100gほどの重さの未熟な状態で誕生します。これは母親の体重のわずか1/900です。目が見えず、自分で歩くことも食べることもできず、フンをすることさえできません。パンダの赤ちゃんは極めて生存率が低く、すぐに病気になったり、死んでしまいます。野生での初産では7割が生後1週間以内に命を落とすと考えられているほどです。

いかがでしたか。みなさんもパンダを飼いたいと思ったら、レンタル費と飼育にかかる費用、そして飼育しやすさなどを考慮してから借りるようにしてくださいね。 

参考