生物

シマウマはなぜ家畜化できなかったのか?

過去に多くの人々がシマウマを家畜にしようと試みてきました。しかし、この試みのすべてが成功することはありませんでした。ではなぜこの縞模様以外、ウマとそっくりなシマウマは家畜にならなかったのでしょう。

シマウマとは

シマウマはウマ科ウマ目に分類されます。ウマの仲間は全部で7種あり、そのうちの白黒の縞模様を持つ系統の3種がシマウマです。この3種はサバンナなどの草の豊富な地域に住むサバンナシマウマ、より乾燥したところに住むグレービーシマウマ、そして南アフリカの山地に住むヤマシマウマです。

ジオちゃん

これら3種のシマウマは縞模様以外はウマにそっくりですが、家畜化することができませんでした。

シマウマを家畜にできない3つの理由

結論から言いますと、シマウマを家畜化できない理由には以下のようなことがあげられます。

  • 警戒心が強く、気性が荒い
  • シマウマの群れには階級がなく、人間をリーダーとして認識しない
  • 飼育下の繁殖が難しい。

などです。

シマウマを家畜化しようとした試み

それではここからシマウマを家畜化しようとした試みについて見ていきましょう。最初にシマウマを家畜化しようとしたのは19世紀以降の入植者たちです。ヨーロッパからアフリカを開拓するためにやってきた人たちは移動の問題に直面していました。この新しい大陸には移動手段であるウマがいなかったのです。当時、ウマをヨーロッパから連れてくるには莫大なコストがかかりました。

また、ヨーロッパから連れてきたウマはツェツェバエが媒介する病気にかかりやすかったのです。シマウマはツェツェバエに刺されにくくこの病気にあまりかかることがありません。最近の研究でシマウマの縞模様はハエの視覚を惑わし、体に着地しにくくさせる効果があることがわかっています。

このようなことから、入植者たちはアフリカにたくさん生息し、この土地の病気にもかかりにくいシマウマを家畜化し、移動手段として使おうと考えました。

ジオちゃん

しかし、すぐに彼らはこの考えが甘かったことに気づかされることとなります。

彼らはシマウマに乗るどころか、近づくことすらできなかったのです。シマウマはサバンナの開けた場所に生息しています。ここではライオンやチーター、ハイエナなどの肉食動物がいて、常に危険にさらされています。そのため、彼らは何万年もかけて警戒心が強くなっていったのです。シマウマは危険を感じると、すぐに逃げるという選択肢をとるように本能的にプログラムされています。さらに彼らは馬より攻撃的でもあります。実際に危険を感じたとには捕食者と戦う準備がいつでもできています。逃げられないとわかったときは敵に噛みつき、強力なひずめで攻撃するのです。

シマウマに乗った人たち

それでも、シマウマの乗馬に成功した人たちは少なからずいます。1880年代のドイツの東アフリカ植民地ではドイツ兵がシマウマに乗っていました。しかし、シマウマは体の構造上、乗馬に適しているとは言えません。平均的な馬の高さは180センチで、大人の背丈と同じくらいになります。シマウマはそれよりも小さく、150センチ以下です。そして乗り心地があまりよくありません。シマウマの背中は馬よりも強くないため、軽い人しか乗ることができないのです。また、シマウマは首が硬く手綱を用いた方向転換が困難でもあります。彼らはウマよりもロバの系統と近縁なのです。

それでは、シマウマをロバのように荷物を運ばせたり、荷車をひかせたらどうでしょうか。これを実際に行った人がいます。イギリスの銀行家ウォルター・ロスチャイルドです。彼はシマウマに荷馬車を引かせるよう訓練しました。そして彼はシマウマの馬車にのって一度、バッキンガム宮殿の近くまでやってきたのです。この時、シマウマは重い荷を軽々と引くことができました。このように思惑通り彼は人々の注目を集めることができましたが、それでもこの例はまれで、多くのシマウマは前述したように、気性の荒さのため調教するのが困難でした。

シマウマの群れ

サバンナシマウマはオス1頭と複数のメス、そしてその子供たちからなる家族群とよばれる群れをつくって暮らしています。この家族群が食料を求めて平原を移動する際に集合し、1万頭もの大群になります。このように非常に大きな群れを作るため、彼らの群れには厳密な階級が存在しません。これには襲われたとき、散り散りに逃げて捕食者を混乱させることができるという利点があります。

シマウマに階級が存在しないことも家畜化に向かない理由のひとつと言えます。家畜化するにあたって動物の階級を維持する能力は、人間が彼らのリーダーになるために非常に重要な要素となるからです。シマウマは自身よりも序列の上の個体の行動に倣う習性がありません。そのため、人間が彼らの群れをコントロールするのが困難なのです。

さらにシマウマは飼育下の繁殖が難しい動物でもあります。飼育下で繁殖したがらない動物は、人為選択ができないため、人にとって有益な子孫を得ることができません。

ウマは乗馬に最適

これにたいしウマは家畜化、そして乗馬するにあたって最適でした。ウマは従順で人に良く慣れます。ウマの群れには明確なリーダーが存在します。群れのルールに従わないウマはリーダーが群れからそのウマを追い出すのです。このように野性下では群れから追放されることは危険にさらされることになるため、ウマは群れのルールに従って生きようとします。これが人間が彼らをコントロールしやすい理由です。また、ウマの大きく力強い体格は乗馬に適していました。

まとめ

これまで見てきたようにシマウマは警戒心が強く、気性が荒いため人間を進んで乗せようとしません。そして人間をリーダーと思わないため、シマウマをコントロールすることは困難です。それに加えて飼育下での繁殖が難しい。それから体の構造上、乗馬に適していません。その後、蒸気機関車や車が普及し始めたため、シマウマに乗ろうとする試みは忘れ去られていきました。こうしてシマウマは家畜化されることがなくなったのです。 

参考: シマウマ – Wikipedia

家畜化 – Wikipedia