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大都会のハイテク「昆虫農場」が私たちの未来を変える?

ロンドンの中心地にあるエントサイクル(Entocycle)という会社はハイテクを駆使した都市農場です。ここでは現在、何百万匹もの昆虫が飼育され、それらは家畜の飼料や植物の堆肥へと変わります。この昆虫はまた最終的には私たちの食料にもなりえます。この会社がどのように私たちの未来を変えていくのか見ていきましょう。

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家畜の飼料問題

現在、ニワトリには魚を飼料として与えます。養殖魚もまた野生から捕らえてきた魚を与えています。すべての家畜動物は、人間と同様に脂肪とタンパク質を摂取する必要があります。これらのたんぱく質はおもに2つの資源からきています。それは、大豆魚粉です。 

しかし、この大豆は熱帯雨林の破壊の、最も大きな原因のひとつでもあります大豆を栽培するための畑を作るために、森林を伐採する必要があるからです。その結果、森林に住む動植物は、住処や食料を得る場所を失ってしまっています。大豆の生産のために、ドイツの3倍もの大きさの面積の農場が使用されています。 

そして、現在、養殖魚にバランスの取れた栄養を供給し、大きく育てて出荷するために魚粉を飼料として与えています。この魚粉を作るために、小さな遠海魚が乱獲されています。残念ながら、このような海洋資源の乱獲は、海洋環境に壊滅的な影響を与えています。これらの遠海魚は食物連鎖の基礎となっているため、世界の生物多様性に長期的な影響を及ぼし、ある種の資源はほとんど絶滅の危機に瀕しています。 

ジオちゃん

 また、海から収穫された魚には、水銀やPCB(ポリ塩化ビフェニル)などの汚染物質が高濃度で含まれている場合があり、これらを摂取した場合、人々の健康へのリスクが懸念されています。  

食料不足

私たちが消耗できる資源には限りがあります。この資源の消耗はたんぱく質の需要の上昇と、人口増加のふたつにより加速しています。新興国では、豊かになった消費者が肉の摂取を増やし、子どもにより多くの乳製品を与ています。また、アメリカでは健康志向の消費者が、パンやシリアルなどの炭水化物を減らし 肉、ヨーグルト、卵といった動物性たんぱく質を増やしています。 

そして、公衆衛生が大きく改善されたことで死亡リスクが低下し、平均余命が延びたため、世界人口は増加し続けています。

ジオちゃん

 現在、世界人口は80億人を超えていると言われています!! 

昆虫技術会社「エントサイクル」

これらの問題を解決するために2017年に昆虫技術会社であるエントサイクルが立ちあげられました。エントサイクルは昆虫、技術、イノベーションを駆使して持続可能なたんぱく質への世界的なシフトを加速することを使命としています。

アメリカミズアブ 

この会社の農場ではアメリカミズアブが飼育されています。アメリカミズアブとはハエ目ミズアブ科の昆虫で、アブの一種です。幼虫はフェニックスワームと呼ばれ、たんぱく質や脂質、カルシウムなど栄養価が高いため、爬虫類や観賞魚などのペットにもなっています。ゴキブリやコオロギ、ミルワームと違って外骨格がないため消化しやすいのだそうです。 

成虫は体長1.5cmから2cmほどで、名前の通り、原産地は北米や中米になります。しかし、人類の大陸間輸送活動により、現在、世界各地に分布しています。イギリスにも帰化しており、日本でも北海道以外の全国で自然繁殖しています。

ジオちゃん

 日本に水洗式便所が普及するまでは、便所周辺でよく見かけられたため、「便所バチ」と呼ばれていました。 

家畜の飼料としての昆虫

アメリカミズアブのメスは野生下で1000個の卵を産みますが、そのうちの99.9%が食べられてしまいます。しかし、この会社ではこれを飼育し、ビールかすや、コーヒーの出し殻などの生ごみを幼虫に与えています。幼虫はこれらの生ごみを食べ成長します。そして、幼虫は養鶏や魚の飼料に、排泄物と食べ残しは植物の肥料として姿を変えます。このサイクルは非常に早く、卵からかえった幼虫は、たった6日でこれらの資源に利用されます。アメリカミズアブがこの農場に抜擢されたのは温暖な気候の下での大量養殖が比較的容易で、また前述したように含有する栄養が量、バランスともに大変優れているためです。 

現在、世界中で生産されている食料の1/3が廃棄されています。アメリカミズアブは森林破壊や海洋資源の枯渇を防ぐだけでなく、生ごみを食べることから、生ごみ問題も解決してくれるのです。 

昆虫は「アップサイクリング装置」

昆虫は自然のアップサイクリング装置です。アップサイクリングとは創造的再利用とも呼ばれ、副産物や廃棄物、役に立たないまたは不要な製品をより良い品質と環境価値の新しい材料または製品にアップグレートして役に建てるプロセスのことを言います。 

昆虫は有機的な自然のたんぱく質を作ることができます。しかも、非常に効率的にたんぱく質を生産してくれます。従来のたんぱく質源よりも土地、水、開発時間が短くて済むのです。農業に使われる土地を削減でき、自然林とその中の生態系を回復することができます。

エントサイクルのハイテク装置 

エントサイクルはアメリカミズアブのための特別な部屋を作りました。ここでは、野生下とは異なるライフサイクルで虫を管理しています。そして、自動化システムにより、24時間365日、この部屋の中の環境を調節しています。

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未来の農家は今日の技術者」という言葉を提唱し、この装置をロンドン以外のイギリスの都市に広げることを計画しています。 

昆虫食

農場の昆虫は家畜や養殖魚のためだけに飼育されているわけではありません。最終的には人間が食べるものとして使われます。 

ミズアブは乾燥させると、お米のパフのようにサクサクとした食感になります。また、イヤな臭みが弱く、ナッツのような風味がします。さらにより食べやすくおいしくするために、シナモンなどを隠し味にするといいそうです。

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サクサクした触感のため、グラノーラとミルクとの相性がとても良く、これらと一緒に召し上がるとよいでしょう。 

まとめ

昆虫食は現在、トレンドになりつつなります。世界では2億人がすでに昆虫を日常的に食べています。みなさんはこの記事を読んでちょっとアメリカミズアブを食べてみたいなと思ったりしましたか?

参考

このロンドンの昆虫農場は、私たちの食生活を変えています。私たちの惑星のためのパイオニア

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